広島県三次(みよし)市は、山陰寄りの山あいに位置する町です。ここで昔から食べられている郷土料理は「わに料理」。何ともワイルドな…と言うより、山間部で主に水辺で生息するワニがなぜ食べられる? そもそも日本にワニって生息していましたっけ?
「わに」は「サメ」
広島では「わに」とは「サメ」のことを言います。「わに料理」とはサメを使った料理のこと。爬虫類のワニほどではないもののサメ料理も相当ワイルドな印象がありますが、中華料理のフカヒレだってサメなのですから、何の不思議もありません。「わに」は生でそのまま、焼いたり揚げたりと調理法はさまざまです。最も一般的な食べ方は刺身で、柔らかい食感であっさりとした味が特徴だそう。また、火を通すと鶏肉のような独特な食感も楽しるそうです。代表的な料理はわにの刺身、わにの酢の物やわにの煮物、わにの天ぷらにわにの湯引き、わにの炊き込みご飯、わにフライ、わに丼など多彩に楽しめます。
「わに」は料理店などで提供されている他、スーパーなどの店頭にも並ぶので、一般家庭の食卓にものぼるそうです。身がしまった秋から冬にかけてが一番おいしい時期で、現在でもハレの日の料理やおもてなし料理として親しまれ「『わに』が無いと祭りも正月も来ん」と言われるほどです。
山陰の山深くに、なぜサメ料理?
通常なら魚は2、3日で腐敗してしまいますが、排尿器官が発達していないサメは体内にアンモニアを貯めやすい特徴があります。多くの地域ではその臭いが嫌がられて食用にされることはあまりありませんが、そのアンモニアの効能によって、サメの肉は腐りにくいのです。現代のように輸送技術が発達していなかった時代において、サメは山奥で食べられる海産物として重宝されてきたのです。
ちなみに、古事記に出てくる有名な神話「因幡の白兎(いなばのしろうさぎ)」には「和邇(わに)」という言葉が出てきます。この「和邇(わに)」が何をさすのかは論争があり、中国地方の人が「サメ」を「わに」と呼ぶことから、魚の「サメ」という説と爬虫類のワニ類だという説があります。もしサメ説が正しいのであれば、この地方の方々は古代からもしかしたら「わに」を食していたかもしれませんね。
「わに」が食べられるお店
「むらたけ総本家」は、市場より厳選された旬の魚介類がおいしいお店です。こちらで食べられるワニ料理は、ワニ刺身にワニ湯引き、ワニ梅しそ巻き天ぷら、ワニあぶり串。やはりいただきたいのは、ショウガじょうゆでいただくワニ刺身。きれいなピンク色で、バラの花のように盛り付けられています。臭みもなく淡泊な味わいで地酒によく合うそう。
「フジタフーズ」では大胆にアレンジしたワニグルメが食べられます。三次のご当地バーガーとして誕生したのが「ワニバーガー」。わに(サメ)の身のハンバーグを照り焼きソースをからめ、たっぷりの千切りキャベツと一緒にバンズに挟んであります。柔らかいサメの肉が口の中でとろけ、臭みもなくおいしいと評判です。
「わにまん」は、一見普通の肉まんのようですが、中の具材は新鮮野菜や春雨やタケノコなどと「わに」の身、コラーゲンいっぱいの「わに」の皮で中華風の味付けをしています。独特のもっちり生地とも相性抜群。全国放送の朝の情報番組でも紹介されてその美味しさが絶賛され、お土産品にも人気のご当地まんです。
「ワニドッグ」は栄養たっぷりのワニをまるごとウインナーに閉じ込め、ドッグパンに挟んだ一品。ソースは1番人気のコブソースの他に、タルタルソース、ケチャップ、店頭のみで販売しているピリ辛のサルサソースの4種類があります。これって、つまりは魚肉ソーセージのホットドッグでしょ? と思われるかもしれませんが、一口食べると違いがわかるそう。広島県三次市を訪れることがあれば、ぜひ確かめてみてください。
ザ・ご当地検定の問題
Q. 広島県三次市で食べられている「わに料理」とはワニではなくどんなものを使った料理?
A. サメ