うどんは昔から日本各地で食べられてきている麺料理です。全国どこでも食べられているということは、それだけ地域色が反映されたうどんも考案されてきました。今回は、数あるうどんのなかから、大阪を中心に食べられている「かすうどん」を紹介していきます。
味の決め手は油かす
かすうどんの「かす」とは、ある食材を油で揚げたものです。その食材とは牛ホルモンです。油で揚げられて水分が抜けた牛ホルモンは「油かす」と呼ばれます。この油かすをトッピングして誕生したのが、かすうどんです。基本的にはかけうどんに油かすを加えるのですが、ざるうどんのつゆに油かすを入れた「つけかすうどん」を提供している店もあります。
油かすはもともと意図的に作られていたものではなく、牛ホルモンを熱して食用油脂を抽出したあとの残りかすでした。これをうどんに加えることで、出汁のうまみが油かすに染みわたり、牛ホルモンと出汁の味を一緒に楽しむことができます。また、油かすのエキスも出汁に溶け出すので、汁に甘みがプラスされます。
油かすは食用油脂を作るときにできる副産物でしたが、高たんぱくで低脂肪、そしてなによりコラーゲンがたっぷりと含まれていることから女性に人気の食材となりました。需要の増加に伴い、現在市場に出回っている油かすの多くは、低温の油でホルモンを揚げた加工食品になります。
牛ホルモンが重要なかすうどんですが、このうどんの発祥地は大阪府南部にある河内地方になります。河内は昔から畜産業が盛んで、牛ホルモンから食用油脂をとったあとの油かすが手に入りやすい環境でした。残った油かすを有効活用できないかと考えた結果、かすうどんが誕生したのです。河内で主に食べられてきたかすうどんは、2000年頃から大阪府全域に広まっていきました。
かすうどんはシンプルな料理のため、油かすさえ手に入ればどの家庭でもつくることができます。油かすはどのスーパーでも売っているようなメジャーな商品ではないので、近所の店になかったらネット通販で購入するか、自作してみましょう。生の牛ホルモンは多くのスーパーで取り扱いがあります。それを油で素揚げしてカリカリにすれば油かすはできます。
本格的なかすうどんが食べたい場合は、近所に店がないか調べてみるのもいいでしょう。かすうどんを提供している店のなかには、チェーン店を展開しているところもあります。もしかしたら近くに出店していることもありえます。
ほかにもパッケージ商品として販売されているかすうどんもあります。こうした品はネット通販で入手することが可能です。
かすうどん誕生の地 河内ってどんな場所?
大阪と言えば古くから商人の町というイメージがありますが、河内は江戸時代から農業が盛んな土地でした。幕府直轄領だった地域もあり、藩の支配力はほとんど及びませんでした。また、肝心の領主は江戸にいるので、農地の管理などは農民たちに任せっきりだったと言われています。河内で主に栽培されていたのは木綿でした。18世紀中ごろには農地のおよそ7割が木綿畑だったという記録が残っているほどです。木綿の生産が増えると同時に発達していったのが織物です。この木綿を織物にした「河内木綿」が誕生しました。河内木綿は糸が太くて厚手という特徴があります。
河内木綿は、当初は農民たちが各々の自宅で作っていましたが、やがて工場を作ってそこで生産するようになったと言われています。江戸時代に農民たちの手によって工業施設が立ち上げられたのは極めて珍しい事例です。このような歴史があるため、河内地方の人々は地域の団結力があり、主義主張が強いという気質があるとされています。僧侶で作家でもあった今東光は河内に住んでいたことがあり、河内はバチカンのようなところ、と言ってその歴史と風土に魅せられました。
もったいないの精神から生まれたかすうどん
かすうどんの油かすは、食用油脂を抽出して用済みになった牛ホルモンを使っています。もったいないの精神が生み出した料理と言えるでしょう。大阪は観光スポットがたくさんある府です。観光地を巡りながら、かすうどんに舌鼓を打ってみたらどうでしょうか。
ザ・ご当地検定の問題
Q. 大阪の名物うどん「かすうどん」。この「かす」とは何を揚げたもののこと?
A.牛ホルモン