宮崎県日南市の飫肥(おび)地区に、江戸時代から受け継がれてきた郷土料理があります。ふわりとやわらかく、ほんのり甘い独特の風味が口に広がる「おびてん」です。その歴史や特徴をご紹介します。
おびてんとは魚のすり身を揚げた飫肥城下町の伝統の味
おびてんは、日向灘の近海で水揚げされたイワシやアジ、シイラなどの大衆魚を丸ごとすり身にして、豆腐と黒砂糖、味噌を混ぜ合わせて油で揚げた料理です。衣をつけずに揚げるため、見た目はさつま揚げに似ていますが、豆腐が入ることでふわりとした独特の食感に仕上がります。甘みとコクが合わさった味は、ほかの練り物にはないおいしさがあります。
そんなおびてんは、飫肥藩の領民たちが工夫を重ねて生み出したとされ、農林水産省の「うちの郷土料理」にも掲載されている料理です。飫肥周辺では古くから味噌を使った料理が根づいており、19世紀半ばに南西諸島からの移住者によってサトウキビ栽培が広がり、黒砂糖と味噌を使うおびてんが生まれました。田植えや稲刈り、運動会といった地域の行事にも欠かせない存在として、地元の人々の日常に深く根づいています。
さつま揚げと何が違う?おびてんが愛される本当の理由
おびてんとさつま揚げは、どちらも魚のすり身を油で揚げた練り製品ですが、中身の配合がまったく別物です。さつま揚げは魚のすり身を主体にしているのに対し、おびてんには豆腐・黒砂糖・味噌が加わります。なかでも黒砂糖と味噌を組み合わせる製法はおびてん独自のもので、甘さとコクが溶け合った独特の風味です。
おびてんが地元に根づいた理由の一つは、老若男女問わず好まれる、独自の甘じょっぱい味わいにあります。子どもには黒砂糖のやさしい甘さが、大人には味噌のコクと魚の旨みが好まれ、幅広い世代に受け入れられてきました。宮崎空港でも土産品として販売されており、手に取りやすい名物として親しまれています。
飫肥城下町を散策する観光客にとって、おびてんは欠かせない食べ歩きグルメです。「おび天蔵」など城前通りの店舗では実演販売を行っており、揚げたてをその場で食べることができます。石畳の城下町を歩きながら、できたてのおびてんをほおばる体験は、飫肥を訪れた人の思い出の一つになっています。
おびてんのおいしい食べ方とアレンジレシピ
おびてんは、煮たりせず、揚げたてをそのまま味わうのが基本です。お取り寄せや購入後に温め直す場合は、フライパンで軽く焼くか、電子レンジで温め直すと、外側がほんのり香ばしい仕上がりになります。しょうが醤油を少しつけると、魚の旨みがより際立ちます。
おびてんはそのまま食べる以外にも、さまざまな料理に使いやすい食材です。そばやうどんの具材として加えると、出汁にコクが出て一段と深みのある汁物になります。薄切りにして野菜と炒めたり、おでんの具として煮込んだりする使い方も好評で、甘じょっぱい風味が全体によくなじみます。
おびてんのお供として宮崎の地元で定番なのが、芋焼酎や麦焼酎との組み合わせです。焼酎のすっきりとした飲み口は、おびてんの甘みやコクと好相性です。お酒が苦手な方には、緑茶や麦茶といったさっぱりとした飲み物が後味をすっきりさせてくれます。
おびてんの買い方・通販と現地で食べられる店
おびてんを現地で購入・食べるなら、日南市飫肥の「元祖おび天本舗」が代表的な専門店です。飫肥城下町に本店・おび天蔵・おび天茶屋の3店舗を構えており、製造直売で作りたてを購入できます。宮崎を訪れた帰り際には、宮崎ブーゲンビリア空港2階の直営店でも、おびてんを購入できるので便利です。
現地に足を運ぶ機会がない方は、元祖おび天本舗の公式オンラインショップからお取り寄せができます。定番のおびてんのほか、ごぼう入り・紅しょうが入り・高菜入りなど種類も豊富で、詰め合わせセットも充実しています。冷蔵商品のため届いたら早めに食べるか、食べきれない分は冷凍保存がおすすめです。
おびてんは、江戸時代から飫肥の人々に食べ継がれてきた、魚のすり身と豆腐・黒砂糖・味噌を合わせた郷土料理です。揚げたてはもちろん、アレンジ料理やお取り寄せでも楽しめます。宮崎・日南を訪れる機会があれば、ぜひ現地で本物のおびてんを食べてみてください。
ザ・ご当地検定の問題
Q.大分県の老舗菓子店「菊家」が作る銘菓はどれ?
A.魚のすり身を揚げたもの









