今回は関西の代表的な和菓子を紹介します。その材料は、もち米を蒸した後に干して、粗めに挽いて作られた粉なのですが、その正しい名前を答えられる人はそれほど多くはないようです。
粉の名前と由来について
関西で桜餅の材料となる粉の正しい名称は、道明寺粉といいます。この粉は、現在の大阪府藤井寺市にある道明寺の尼僧が、もち米を挽いて作った粉がその起源であると言われており、当時はもっぱら保存食の材料として使用されていたようです。道明寺は、かつては土師寺という名称だったのですが、平安時代中期に活躍した菅原道真が権力争いに敗れて大宰府に流される際に、この寺に立ち寄ったことをきっかけとして、彼の号である道明に因んで改称されています。そのため、道明寺粉は、道真ゆかりの食材であると言っても過言ではありません。
道明寺粉を用いた和菓子とは
このように長い歴史を有する道明寺粉ですが、それを用いて作られるのが関西風の桜餅です。別名を道明寺餅ともいうこの和菓子は、道明寺粉と小豆の餡から作られています。作り方は、道明寺粉に水を吸わせたうえで蒸し上げて餅状にし、その中に平らに広げた餡を詰めて成形した後に、塩漬けの桜の葉で全体を包んで完成です。桜の葉を使用することから、旬の季節は春先となっています。最初に作られたのは1830年から1844年にかけての天保年間の頃で、大坂(今の大阪)にあった土佐屋が発祥の地であるとされています。その後、関西各地に広がりを見せ、大阪府内に加えて、京都府や奈良県などの関西一帯の老舗和菓子店などでも手に入れることができるようになっています。
なお、桜餅に用いられる桜の葉には、主にオオシマザクラの葉を塩漬けにしたものが使用されています。その特産地は、伊豆半島にある松崎町で、実に全国シェアの70パーセントがこの町で生産されています。この桜の葉にはクマリン、テルペン、テアニンなどといった成分が含まれているため、口にすることによって口臭を予防する効果が期待できるため、実際に奈良時代にはそのような用途として使われていたこともあるようです。
桜餅という和菓子は、以上で述べた関西風のもののほかに、関東風のものも存在しています。関西風との違いは、関東風の桜餅は小麦粉を水で溶いた生地で餡を包んでおり、道明寺粉を使用していないという点にあります。歴史的には、長命寺と呼ばれる関東風桜餅の方が先に誕生したようですが、関西の地元の人たちに言わせると、桜餅と言えば道明寺のことであり、長命寺は桜餅としては認められないという人もいるようです。
道明寺を食するには
関西風桜餅である道明寺は、関西であればどこでも食べることができるほどメジャーな和菓子ですが、関東以東では関東風桜餅が主流であることから、必ずしもすべての和菓子店で取り扱われているわけではありません。もっとも、鶴屋吉信などの全国展開している関西発の和菓子店に行けば、関西以外のエリアでも気軽に道明寺を味わうことは可能となっていますので、その味に関心があるということであれば一度試してみてはいかがでしょうか。
この道明寺は、芸能界にもファンが多いスイーツであり、例えばとんねるずの木梨憲武さんは、自身のインスタグラムで目黒にある和菓子店の商品を取り上げています。差し入れにも使う予定であるとコメントされているのですが、大物芸能人がお勧めするということからも、いかに道明寺が優れた和菓子であるかが分かるのではないでしょうか。
季節の味覚である道明寺を楽しもう
道明寺は大阪府や京都府を中心に関西エリアで広く親しまれている和菓子です。使われている道明寺粉は菅原道真ゆかりの歴史ある食材ですので、関西以外の方にも春の時期に是非とも食べていただきたい一品となっています。
ザ・ご当地検定の問題
Q. 関東では「長命寺」、関西では「道明寺」と呼ばれる和菓子は?
A.桜餅