福岡県でよく食べられていた「タイラギ料理」。かつては有明海の冬の味覚とも称されていましたが、近年では休漁が続いている海産物です。この「タイラギ」とはいったい何の名前なのかご存じですか?
有明海の冬の味覚、平貝(タイラギ)?!
タイラガイ(平貝)をご存じですか?黒めの深緑色で光沢がある大きな二枚貝で、先のとがった三角定規のような形(半正三角形)をしています。大きな貝柱を主に食用にします。
殻の長さは25~30cmほど。大きいものでは貝柱の直径は5cm、殻の厚みは4cm以上、殻の長さは35cmを超えるほど大きく育ちます。日本では、東京湾、伊勢湾、瀬戸内海など内海で干潟や砂泥底のあるところに生息しており、水深約5~10mに多くいます。かつては有明海もタイラガイの宝庫で大漁業地域でした。
有明海周辺の福岡県・佐賀県ではタイラガイのことをタイラギと呼びます。実は、タイラガイの方が呼び名として浸透していますが、タイラギの方が標準和名なのだそうです。
タイラギは主に冬に漁獲され、旬は春とされます。刺身や塩焼きなどで調理します。ホタテにも負けない美味しさから高級貝として人気です。
高級貝「タイラギ」の食べ方
大きな貝の中には身がぎっしりつまっていますが、内臓の部分は食べません。周りの長い貝ひもと小柱、そして大きな貝柱が食用となります。
固く引き締まった貝柱の刺身は、程よい柔らかさと甘みがあります。ちなみに、繊維に沿って切るのと繊維を断って切っていくのでは食感が少し変わってきます。表面を炙ってワサビ醤油で頂くのも大変美味です。
塩焼きやバター焼き、粕漬けなど、火を通して調理をする料理もあります。火を通すことで旨味がでて、歯ごたえが増し、これがまた美味です。
貝ひもは、ワタやビラと呼ばれる部位を生でポン酢でいただくのもオツですが、焼き物や串焼きにしてもコリコリとした食感がとても美味しいです。さらに、煮つけにも最適です。
九州では足も食します。貝殻の横からはみ出している髪の毛のような部分は、足から伸びる足糸です。10cmにも及ぶ長い繊維質の塊で、昔は糸にして織物にも使っていたそうです。
復活求む!!有明海の「タイラギ」!
日本に生息するタイラギは殻の表面に細かい突起のある有鱗型と殻の表面が平らな無鱗型の二種があるとされてきました。
有鱗型の方をおもに「タイラギ」と呼んでいて、無鱗型の方は西日本を中心に「ズベ」や「ズベタイラギ」と呼ばれることもあります。
これらは同じ一種内の形態変異で、生息環境により変異したと考えられていましたが、1990年代に遺伝学上、別の種であることが新しく判明しました。
タイラギは1年で殻長が10cm、2年で20cm、6年で30cm前後に成長します。日本では房総半島より南に分布し、東京湾、伊勢湾、瀬戸内海など内湾の10m~50m程度の水深に生息しています。海底では殻頂(尖った方)を下にして刺さるように生息しているそうです。
タイラギに含まれるタンパク質は貝類の中でもトップクラスとされていて、血圧やコレステロールをさげるタウリンも含有されている、栄養豊富な貝です。さらに、脂質は少なく低カロリーなので、ダイエットにも最適です。
有明海でタイラギが大量に獲れていた頃は潜水器により漁獲されていましたが、近年は干潟で手取り(徒取り)で漁獲されるようになりました。
そんなタイラギですが、12シーズン連続で休漁が続いています。25cmを上回る個体が見つからなかったとのことから福岡県・佐賀県の両県にて休業を決めているのだそうです。
1個あたり400~600円とされる高級貝。バブル期にはひとつ1500円という高値でした。ホタテにも負けない旨さがあるということで、人気の貝なだけに復活を望む声も絶えません。
現在、タイラギは養殖の研究が進められ、2013年には人工種苗の孵化に成功し、実用化が待たれているのだとか。有明海での冬の味覚とされながらも休漁を余儀なくされているタイラギ漁。有明海でのタイラギ漁が復活されることを切に望みます。
ザ・ご当地検定の問題
Q.福岡県でよく食べられる「タイラギ料理」。この「タイラギ」とは何の名前?
A.貝