三重県にはお土産として人気のある餅が数多くあります。今回はその中でも、松平定信が考案したという言い伝えがある餅を紹介します。その餅は特殊な形状が特徴で、その理由について様々な憶測を呼んでいます。
安永餅の特徴
「安永餅」は三重県桑名名物として知られている餅菓子で、和菓子ファンならその名前を耳にしたことがあるかもしれません。平坦で細長い形状が特徴の焼き餅で、中には粒餡が入っています。焼き目をつけていて、焦げ目の香ばしい香りが人気の秘密です。牛の舌に形が似ていることから「牛の舌もち」とも呼ばれています。餅を細長い形にした理由として、米粒をイメージしたという説や、旅人が懐に入れて持ち歩きやすいようにするためだったという言い伝えもあります。また、旅を急ぐ旅人たちのため餅を焼く時間を短縮できるように、火が通りやすい薄型の細長い形にしたという説もあります。
三重県には、桑名の安永餅のほかに四日市市のなが餅と鈴鹿市の立石餅という細長い焼き餅があります。3つとも細長い形状の焼き餅という点が共通していますが、他の2つに比べて安永餅は生地が薄く中身の餡が透けて見えることが特徴です。また、餅全体をしっかり焼き上げた他の2つほど焼き目がくっきりとしておらず、軽く火にあぶった程度で餅の一部だけきつね色になっているという点でも異なります。
安永餅の歴史
安永餅の歴史は古く、江戸時代から東海道沿いの町屋橋の茶屋で販売していました。長旅の疲れを癒す安永餅は、桑名宿を訪れた旅人などに好評でした。当時三重県は東海道のほかにも大和街道・伊賀街道・和歌山街道など多くの街道があり、旅人が休憩するための茶屋でお茶に添えるため様々な餅を売り出していたのです。安永餅は桑名の名産品として参勤交代で江戸と地元を往復する大名や伊勢参りの旅人の疲れを癒してきました。
徳川家8代将軍吉宗の孫にあたり、寛政の改革を行った松平定信が桑名で隠居していた際に、非常食として考案したのが安永餅だったという説もあります。しかしながら、寛永11年創業を自負する安永餅の元祖「永餅屋老舗」が安永餅を製造し販売を行っているのです。寛永11年(1634年)に安永餅が存在していたとすると、1759年に誕生した松平定信が安永餅を考案したという説に疑念が生じます。ちなみに「永餅屋老舗」以外で安永餅の製造をしているのは「安永餅本舗 柏屋」だけです。
「永餅屋老舗」の安永餅は、白餅に添加物を一切使わず昔ながらの素朴な味を守ってきました。賞味期限は製造日を含め3日しかありません。紅白の安永餅は贈呈用に発案された商品で、ブライダル用に購入する客を中心に人気が高まりつつあります。「永餅屋老舗」は、安永餅の生地に「なばな」を練り込んだ「なばな安永餅」という新商品も開発しました。「なばな」とはビタミンCやカルシウムが豊富な緑黄色野菜のことで、「なばな安永餅」はヘルシーな安永餅として好評を博しています。ただし、「なばなの里」のみの限定販売になります。
安永餅製造元の「永餅屋老舗」と「安永餅本舗 柏屋」以外では、桑名駅・名古屋駅・中部国際空港の売店や伊勢湾岸自動車道・東名阪自動車道・名神高速道路のパーキングエリアでも購入できます。ちなみに、平成の次は「安永」が新元号になるのでは?という予想もあり、安永餅の売り上げも上がるのではないかと桑名で期待が高まっていたようです。
三重県に行ったら安永餅を食べてみよう
三重県に旅行したら、桑名名物の安永餅を買って伊勢茶を飲みながらその上品な味を楽しみましょう。四日市市のなが餅や鈴鹿市の立石餅と食べ比べてみるのも一興かもしれません。賞味期限が短いので、お土産で持ち帰る際は注意しましょう。
ザ・ご当地検定の問題
Q. 三重県の桑名で隠居していた松平定信が非常食として考案したとされる、江戸時代の元号の名前が付いた餅は?
A. 安永餅