静岡県焼津では、全国でも珍しい“へそ料理”と呼ばれる郷土の味があります。漁港の町で受け継がれてきた独自の食文化で、地元の人々の暮らしとともに発展してきました。今回は、その料理が生まれた背景と魅力を解説します。
カツオの心臓を味わう「へそ料理」誕生の背景と静岡の文化
焼津漁港は古くからカツオ漁が盛んな町として知られています。大量に水揚げされる中で、漁師たちは食材を無駄にせず使い切る工夫を重ねました。その中で生まれたのが“へそ料理”です。船上で手早く調理できるため、漁師たちの間で自然と受け継がれていきました。
“へそ”という呼び名は、地元の方言や感覚から生まれたとされています。体の中心に近い部位を指すことから、親しみを込めてそう呼ばれるようになりました。漁師のあいだで使われた言葉が広まり、やがて静岡の名物として定着したのです。
こうした呼び名の背景には、焼津の漁師たちが大切にしてきた”もったいない”の精神があります。魚のすべてを活かすという考え方が、へそ料理を生み出しました。限りある海の恵みを余すことなく使う姿勢が、今も焼津の食卓に根付いています。
ぷりっとした食感と旨みが魅力 「カツオのへそ(心臓)」が人気の理由
カツオのへそは、一匹からほんの少ししか取れない貴重な部位です。漁師の間でも手に入る量が限られており、地元では「海のごちそう」として珍重されています。水揚げの時期に合わせてしか味わえないことも特別感を高め、静岡の名物としての価値を支えています。
へそ料理の魅力は、何よりも独特の食感と旨みにあります。新鮮なものは弾力があり、かむほどに深い味が広がります。レバーに似た濃厚さを持ちながら、魚特有の軽やかさも感じられる料理です。内臓料理の中でもクセが少なく、多くの人に親しまれています。
焼津では昔から家庭の味として親しまれ、今では観光客にも人気の一品となりました。地元の食堂や居酒屋で提供され、旅行の思い出として選ばれることも多いです。SNSを通じて注目が広がり、焼津グルメを象徴する存在として知られるようになりました。
焼く・煮る・揚げる カツオの心臓を使ったへそ料理の多彩な食べ方
焼津では、へそ料理といえば味噌煮が定番です。濃いめの味噌でじっくり煮込むことで、独特の旨みと甘みが引き立ちます。塩焼きは素材の持つ風味を素直に味わえる調理法として人気があります。どちらもご飯に合い、家庭の食卓で長く愛されてきました。
近年は、フライや炙りといった軽やかな調理法も人気です。衣をつけて揚げると香ばしく、外はサクッと中は柔らかい食感が生まれます。炙った瞬間に香りが立ち、魚の旨みが一層深まるのも特徴です。若い世代を中心に人気が高まり、飲食店でも新しい一皿として親しまれています。
最近では飲食店だけでなく家庭でも楽しむ人が増えています。家庭で調理するときは、下処理を丁寧に行うことが大切です。血をしっかり洗い流し、湯通ししてから味付けすれば臭みが落ち着きます。生姜やにんにくを加えると風味が増し、より食べやすい仕上がりになるでしょう。煮ても焼いてもおいしく仕上げられ、自宅でも地元の味を楽しめます。
静岡でカツオの心臓料理を味わえるお店とお取り寄せ情報
焼津には、へそ料理を提供する老舗の食堂や居酒屋が点在しています。なかでも「どんた久」や「ふうみや」は、地元の漁師料理を今に伝える人気店です。新鮮なカツオのへそを煮たり焼いたり、またフライにしたりと多彩な味わいで楽しめます。焼津を訪れた際は、ぜひ立ち寄りたい一軒です。
自宅で味わいたい人には、焼津の水産ブランド『へそじまん』が知られています。味噌煮や生姜煮など、家庭でも手軽に楽しめる商品がそろいます。公式オンラインショップや地元の直売所で購入でき、真空パックで日持ちも安心です。贈り物として選ばれることも増えています。
へそ料理は、静岡らしい海の恵みを感じられる珍味として、お土産にも人気があります。旅行後に家庭で温めるだけで、旅の余韻を味わえます。お酒との相性も良く、晩酌のお供にもぴったりです。観光と食の記憶をつなぐ一品として、地元の人々に長年愛され、観光客にも評判です。
焼津のへそ料理は、漁師の知恵から生まれた静岡ならではの味です。希少な部位を使い、素材の旨みを引き出す工夫が息づいています。地元の食堂で味わうのも良し、名産品を取り寄せて楽しむのも一興です。静岡の食文化に触れてみてはいかがでしょうか。
ザ・ご当地検定の問題
Q.静岡県で食べられる「カツオのへそ料理」。カツオのどの部分を使った料理?
A.心臓









