大阪の串カツ屋さんの多くで、衛生上の理由から禁止されていることといえば何でしょう?通常は瓶に入れたソースを串カツにかければ良いだけなのに、なぜこんな規則があるのでしょうか?そのルールの理由や背景を探ります。
大阪の串カツ屋はなぜソース二度漬け禁止なのでしょうか?
1本の串に豚肉などの具を刺して揚げた串カツは、全国で大人気のソウルフードです。串カツにソースは欠かせませんが、皿の上に串カツを置いて上から瓶入りのソースをかけるか、自分用のお皿にソースを溜めて串カツを浸して食べるのが通常です。ところが大阪の串カツ屋を中心として「ソースの二度漬け禁止」というルールを堂々と掲げた店が少なくありません。客がお金を払って食べる串カツに何回ソースを漬けようが本来自由なはずです。ソースに串カツを漬ける回数を制限するとは、客が串カツを美味しく食べる権利を侵害しているようにも受け取られかねません。
しかしながら、これにはきちんとした理由があります。その起源は大阪府の新世界の飲み屋街にあるのです。新世界は日雇い労働者などが多く、安くて気軽に注文でき箸も使わず好きなだけ食べられる串カツが人気でした。大阪の串カツは、ネギマのように複数の具を刺した串が無く串に刺す具は1種類だけでした。豚・牛・ソーセージなどの肉類のほか野菜・鶉の卵・魚介類など種類が豊富でしたが、労働者に喜ばれる安い値段となっていたのです。空腹を満たしたい労働者のために、衣は極細目のパン粉を用いて分厚く揚げていることも特徴的です。
昼間から労働者が店に集いお腹に溜まる串カツを食べながら一杯やるのが、新世界の日常的な風景となっていました。豪快に串カツを平らげる労働者たちにとって、瓶入りソースをいちいち串カツにかけるスタイルはもどかしくて好まれませんでした。そこで、ステンレスの大皿にたっぷりとソースを入れて複数の客が何本でも串カツを漬けられるようにし、毎回客がソースをかける手間を省けるよう工夫したのです。
その際に食べかけの串カツを皆が使いまわしするソースに漬けることは、衛生上問題があることから禁止されることになりました。いったん口をつけた串カツをソースに漬ければ、ソースに唾液が混じってしまうからです。ソースに混入した唾液から感染が生じることは防がなければなりません。串カツだけでなく、食べかけのキャベツや口をつけた箸もソースに漬けてはいけないことになっています。看板や店内の掲示板に大きく「ソースの二度漬け禁止」と書かれている店が多いので、見落とすことは少ないでしょう。
客は入店の際にこうした注意書きを確認し了承したとみなされるので、このルールを守る義務が生じます。ソースの二度漬け禁止という伝統的なルールに罰則を設ける店もあるほどで、客に遵守を強く求めています。万一このルールを破ってソースの二度漬けをしたら、退去を求められることも覚悟しなければなりません。禁止されていると知りながら店員の注意を無視して二度漬けしたなど悪質なケースだと判断されたら、ソース代につき賠償を請求されることもあります。
大阪の串カツ屋がソースの二度漬けを禁止するのは衛生上の理由だけではありません。食べかけの串カツをソースに入れると、不純物がソースに混じることによりソースの質が劣化して味が落ちるからです。串カツ屋のソースはさらっとした薄めのウスターソースで秘伝のタレが入っていると言われており、その味にも串カツ屋のこだわりがあるのです。
では口をつけた後一度漬けただけでは物足りなくて再度ソースが欲しくなった場合、どうしたら良いのでしょうか?実は店側もちゃんと対策を考えているのです。串カツ屋は付け合せのキャベツを出すのですが、そのキャベツのサイズを大きめに切ってあって、掬い皿として利用できます。不足するソースはこのキャベツですくって食べかけの串カツにかければ良いというわけです。キャベツ以外にソースを掬うためのスプーンを机上に準備している店もあります。
大阪に行ったら、ソースの二度漬け禁止の串カツ屋で新世界の雰囲気を楽しみましょう。
ソースの二度漬け禁止の規則は店の便宜を優先したもので、気にいらない人もいるかもしれません。しかし、新世界の活気溢れる串カツ屋の文化を追体験すると思えば、楽しく串カツを味わうことができるでしょう。一度大阪の串カツ屋に立ち寄ってみてください。
ザ・ご当地検定の問題
Q. 大阪の串カツ屋さんの多くで、衛生上の理由から禁止されていることは?
A.ソースの二度漬け
Q. 通天閣の足元に広がり、串カツなどで有名な大阪の繁華街の名前は?
A.新世界